「展示を通じて母国語で発信する日本の歴史」(『博物館研究』2018年1月号)公刊

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千葉大学の短期留学生が、母国語で国立歴史民俗博物館の展示を案内するワークシート製作の授業を行っていますが、この取り組みについて『博物館研究』に掲載していただく機会をいただきました。

2018年1月号は「博物館における多言語対応」が特集で、さまざまな博物館、美術館で展示を担当する学芸員のかたのさまざまな葛藤が書かれています。

文化と言語は一体で存在し、包括して見ることができるかと思います。言い換えれば文化と言語を分離してみられないところはあります。したがって言語だけ単純に翻訳をして文化を説明することは、なかなか難しいものです。また、その文化の中では当たり前と思っている事象が、他の文化圏では、必ずしもそうではないということはよくある話です。

例えば日本での中学高校の歴史教育で「前方後円墳」は当たり前のように出てきますし、歴史があまり好きでない人も、何かしら聞いた用語として捉えて、また形も何となくわかるでしょう。

前方後円墳が何であるか説明もなしに日本語の展示解説に入っていても、おそらくすんなり文章は読まれる(読み飛ばす)でしょう。

これが例えば中国語で翻訳された場合、中国での歴史教育で「前方後円墳」という言葉は当たり前のように出てくることはないので、説明なしの日本語の文章が中国語に訳されていても「前方後円墳って何?」となります。そうなると日本語の解説文を単純に中国語に訳すことでは伝わらないので、文化的背景がわかった翻訳者が適切に意訳あるいは補足の文章を加えないといけません。

結局「言葉を訳せばいい」ではなく、歴史的知見を前提にした適切な意訳が必要な箇所が、博物館の展示解説にはたくさんあります。しかし博物館は、解説を読みに行く場所ではなく「展示を見る」場所です。言葉が多くならずしかし理解のサポートになる翻訳は何か、考える必要はあります。それは博物館展示の多言語での表現の難しさのひとつで、そこは書き記したかったのですが、もうひとつ、今回博物館で展示に取り組む方に、ぜひお伝えしたかったのは、「留学生が作るワークシートは博物館の公式解説ではない」と考えてほしいということです。あえていえば、製作する留学生と指導する側との共同作品というところでしょうか。

もちろん、現在の学会の解釈を大きく逸脱したものはダメですが、留学生による異文化から見た日本の歴史は、非常に新鮮切り口での解釈もあり、それを展示に関わる方々とともに作り上げていく取り組みとして何かしら使えないかなと思ってもらえるとよいかな、と伝えたく書いてみました。

拙文について、もしご興味を持たれた方は和田(kenwada★faculty.chiba-u.jp)までご連絡いただければ幸いです。拙文をお送りします。(★は@に替えてください)

『博物館研究』(公益財団法人 日本博物館協会)HP

また国立歴史民俗博物館ホームページにも、千葉大学の短期留学生のワークシートについて一部公開されています。いちど見ていただければ幸いです。

国立歴史民俗博物館ホームページ(外国人留学生たちが紹介する歴博 千葉大学留学生プロジェクト)