「改善を提言される婚姻・葬送習俗-生活改善同盟会指導書からの考察-」公刊

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千葉大学国際教養学部ではじめて公刊した紀要『千葉大学国際教養学研究』に標題題目の拙論が掲載されました。

もともと日常生活で行われた民俗的慣行は、どうも昭和に入って戦時体制に入る1930年代に、公的な施策に依った官製運動の過程で、一般の人たちの生活に入り込んできている流れがあるように感じます。

官製運動のひとつである農山漁村経済更生運動における更生指定村では、冠婚葬祭に関わる伝承され受け継がれてきた民俗的慣行が、冗費の節減のもとに生活の改善を組織だって指導されていきます。たとえば、生活改善規約を作って、各世帯の家長は署名捺印をして、農家実行組合単位で取りまとめ、実行組合内相互でチェックしていく仕組みを作る更生計画書も見られます。婚礼の際、贅沢な引き出物を用意していないか、葬儀の際、必要以上に酒を用意していないかなどを確守していこうとする村の雰囲気を作っていったことが伺えます。模範村といわれた更生指定村は、農業生産額の向上や納税の遵守を一体化して守ろうとしたところで評価されたかと思いますが、そういう生活習俗の引き締める仕組みを評価されていった側面もあるのかなと思います。

今回の拙論では、官製運動のなかでも通俗教育として展開した「生活改善運動」の活動主体である生活改善同盟会の指導書から民俗的慣行への影響を考えてみました。実のところ更生計画書を読んでいると、生活改善同盟会の指導書や機関誌『生活改善』の記載内容が、更生計画策定のなかで色濃く影響を与えているかな、という感覚を私は持っています。

 そこで拙稿では、1920~30年代に行われた生活改善運動における「社交儀礼」の改善、その中で婚姻・葬送習俗に対する改善に関わる生活改善同盟会指導書である『生活改善の栞』『農村生活改善指針』の記述から考察してみました。1920~30年代に展開した通俗教育(社会教育)としての生活改善運動は、内務省・文部省を中心に進められ、その実施主体である生活改善同盟会は出版、講習会活動など様々な活動で国民に対する生活改善指導を行っています。その中で古くからある民俗慣行に対する改善の提言は、婚姻・葬送習俗を中心に詳細に提案されています。

たとえば、披露宴のあとすぐに入籍しない事実婚的な民俗慣行や、家格の誇示を示す意味合いから儀式で出費を重ねることなどは「陋習」「弊風」「悪風」などとしてとらえ、改善の提言が記されています。これらの生活改善事項が記された指導書は、家政学、女子教育の第一人者により策定されたものが主であり、当時の近代日本社会教育政策の中で、官製運動が民俗的慣行に介入していく様子を読み解く手がかりとなるかな、と思っています。

いろいろな官製運動が、いかにこの時代の民俗的慣行に介在していったかどうか、歩が遅くまた道半ばですが、もう少し考察を深めたいと思っています。

千葉大学リポジトリCURATORで公開しました。ご笑覧、ご指導いただければ幸いです。