拙論「官製運動における通俗教育と陋習の同時代的交差」公刊

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ここ数年、茨城県内の農山漁村経済更生指定村の更生計画書を読んでいます。昭和7年度~12年度までに新規指定された更生指定村の経済そして生活の復興を描いた計画書ですが、その中で生活習俗の改善に関わる事例を検討しています。

その中で陋習とレッテルを貼り、「やってはならないこと」と明文化された生活習俗や、美風と称して古き習慣を評価しながら、今こそ昔に学ぶべきといったことが書かれていたりします。

昭和7年度の初期のものを見ていると「葬式で酒を出さないこと」と書かれてある計画書もありますが「どうぜ守られていないだろうなあ」と想像がつきます。あくまで努力目標ですね。

ところが明確な生活習俗改善を進めるために、組織的にそして誓約書にサインをするなど文書で制約をさせる仕組みを取り入れている方策を提案している更生計画書にもであいます。だいたいそのような村は、更生指定される前に何かしらの生活改善同盟会あるいは類似の組織をもうすでに作って活動しているところなのです。いわゆる通俗教育的な運動で行われた生活改善運動の活動を行っているところは、村全体で生活習俗を作り上げ守っていく具体的な方法がはっきり現れています。

本稿では、そのような生活改善に関わる組織が作られそして守るためのの約を持っている村が、更生指定されて全村一体化した生活習俗を作り上げていくのかの実態をいくつかの事例をもとに整理してみました。

まだ十分ではないですが、何だかこの1930,40年代に、村上げて一体化して作り上げられた生活習俗(年中行事、人生儀礼およびさまざまな村のきめごと)を、民俗調査ではあたかも昔から行われていると錯覚しながら拾い上げている事例も多いのでは、という疑念を持ち始めています。

長くなりましたがこの拙稿は試論ですので、まだまだ不十分です。もし拙稿に興味ある方がおられれば、抜き刷りをお送りしますので、kenwada@faculty.chiba-u.jp

までご連絡ください。

ちなみに拙稿の正確なタイトルですが、

「官製運動における通俗教育と陋習の同時代的交差-生活改善運動と農山漁村経済更生運動の接続に関わる一考察-」(千葉大学文学部編・発行『人文研究』第45号)2016年3月 55-73頁

です。

(なお本稿は日本学術振興会科学研究費助成事業基盤研究C(課題番号25370934)2013年~2015年度 「戦時体制下の公的施策と民俗-経済更生・生活改善各運動の同時代的交差からの検討-」の成果の一部です。)